「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
あら、私のことね。
これってどういう意味なのかしら。
そのまま、美しい女性を花に譬えて使われる言葉よ。
美しいといっても顔の話ではないわ。
立てば・・・、座れば・・・、歩く・・・、
そう、立ち居振る舞いの美しい人は、顔の美醜に拘らず、その人自体を美しいと思わせるのよ。
人の日常生活の動作である行住座臥。
「歩く、とどまる、座る、寝る」といった日常の振る舞いに、その人となりが見えるもの。
整えられた所作には、尊厳という美しさが宿り、見ているこちらの襟元を正させるほどよ。
素敵ね。
私の華道の師匠は70を過ぎたご高齢だったけれど、所作のとても美しい方だったわ。
「花はわざわざ買う必要はありませんよ。道端に咲く花で十分です」と優しく微笑む師匠は、凛と咲く白菊のような人で、
師匠を前にすると、がさつな私も不思議と背筋が伸びるような気がしたものよ。
厳しい戦後を生き抜く中で、野に咲く季節の花と心を通わせるひと時が、たおやかな美しい人を創り上げたのね。
そうね。立ち居振る舞いの美しい人は、周りの心持さえ変えてしまう力を持っていると思うわ。
姿勢や立ち居振る舞いには、その人の心が映し出されています。
心が優雅だと振る舞いまで優雅になり、心が荒むと行いまで粗雑になります。
同じように、外見(形)が変わると心も変わります。
ジャージで過ごす休みは、だらだらとした歩き方をしても、スーツを着てヒールを履けば、颯爽と歩くもの。
着物を着れば、日ごろ組む足も揃えて座り、横柄な様は淑やかさへと変貌を遂げるわ。
ドレスアップした姿で紳士を前にすれば、言葉遣いさえ変わるわね。
振る舞いが変われば言葉まで変わり、心持ちまで変わっていくという証拠ね。
美しさは形から
私も「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」の称号を得たいわ。
所作を整えなさい。
「所作を整える」
所作を整えるには
- 呼吸を整える
- 姿勢を整える
- 言葉を整える
- 物を大切に扱う
呼吸を整える
呼吸を整える=ゆったりとした呼吸のことです。
深く長く息を吐く。
腹式呼吸は、体と心を整えます。
気持ちにゆとりがでてきて、落ち着いた言動ができるようになってきます。
姿勢を整える
姿勢は見た目年齢を左右します。
また、歩く姿には人となりが表れます。
姿勢を正し、歩く時は虎のように堂々と、足は軽やかにゆっくりと運ぶ。
虎行というこの歩き方は、気功の世界では、気を充満させる歩き方だといわれます。
ひょこひょこ、くねくね、だらだら歩けば、軽薄でたよりなく卑しく見えてしまいます。
反対に姿勢を正し颯爽と歩く姿には、快活さや誠実さや威厳が醸し出されます。
言葉を整える
人は言葉からイメージする脳の働きを持っています。
言葉使いの汚さは、粗忽、ガサツというもっとも低劣な人格を表し、品格を落とします。
また、荒々しく浅はかな言葉は、人に不快感を与え、時に傷つけてしまうこともあるでしょう。
言葉は人間の持つコミュニケーションツールです。
試しに、一呼吸置き、言葉を選んで話してみてください。
落ち着いた美しい言葉には、重みや気品が表れます。
また、相手のことを思い図った言葉には、その人の愛が宿ります。
愛の言葉は愛のエネルギーです。
あなたが放つ愛のエネルギーは、多くの愛を引き寄せます。
物を大切に扱う
物を大切に扱おうとすれば、その動きは丁寧なものになります。
例えば、人に物を手渡す時にひょいと投げてみたり、片手で手渡したりすれば、ぞんざいな扱いをしているように見えます。
足でドアを閉めたり、ガチャガチャと食器の音をたてたりと荒々しくせわしい様は、雑で下品です。
片手を添えると女らしく上品よ。
物を大切に扱えば、自然と丁寧な動きになります。
物を持つ手にもう片方の手を添えれば、上品で女性らしい優しい仕草が生れます。
最後に、女人五徳を紹介しておくわ。
女人五徳 安岡正篤 一日一言より
第一 平素人と争競せず
(人と争い競わぬこと)
第二 苦難中怨言無し
(苦しみ悩みの中にあって怨み事を言わぬこと)
第三 飲食を節す
(牛飲馬食では興が冷める)
第四 事を聞いて驚喜せず
(激情を露わにせず、しっとりと落ち着いていること)
第五 良く尊敬す
(何事によらず尊敬することを知ること)
むむむ、、、難しいわねぇ。
こうあれば素敵なんでしょうけど、なかなかよね。